繰越欠損金の引継ぎについて
概要
組織再編で合併を検討する際に最も注目すべきは繰越欠損金が引継げるかどうかということです。税制適格要件を満たせば資産・負債を簿価で引継ぎ、繰越欠損金を引継ぐことができますが、満たさない場合は資産・負債を時価で引き継がなければならず、繰越欠損金を引継ぐことができなくなってしまいます。
まず、税制適格要件を満たすかどうかを検討する前に完全支配関係、支配関係、共同事業要件のどれに該当するかを把握をしなければなりません。次に、その三つに対応する適格要件の確認をします。
完全支配関係、支配関係、共同事業要件と税制適格要件との関係
組織再編税制における税制適格要件は以下の2点で判定されます。
(1)組織再編の直前に完全支配関係、支配関係があるかどうか?
(2)組織再編後に、これらの完全支配関係、支配関係が継続することが見込まれているかどうか?

(1)金銭等不交付要件
組織再編の対価として、被合併法人等の株主に対して合併法人株式等以外の金銭等が交付されないという要件です。ただし、以下については金銭等を交付したとしても、金銭等の交付には該当しません。
➀ 被合併法人等の株主に対する剰余金の配当などに伴う金銭等の交付
➁ 合併比率等により端数が生じた株主に対する金銭等の交付
➂ 反対株主の買取請求による株式の買取りに伴う金銭等の交付
(2)従業者引継要件
合併等に係る被合併法人等の当該合併等直前の「従業者」のうち、その総数の概ね80%以上に相当する数の者を合併法人等に引き継ぐことを要件とするものです。
さらに、平成30年度税制改正にて、80%に相当する者の数が合併法人等を経由するか、又は合併法人等を経由せずに直接、合併法人等との間に完全支配関係がある法人に異動することが見込まれている場合であっても要件を充足することとなりました。
(3)事業継続要件
被合併法人等の合併法人等前の主要な事業が合併後に合併法人等において引き続き行われることが見込まれているという要件です。
上記の(2)と同様に平成30年度税制改正により、合併法人等と完全支配関係がある法人を含めて判定することとなりました。
(4)事業関連性要件
被合併法人等の被合併事業と、合併法人等の合併事業とが相互に関連することを求める要件です。
(5)事業規模要件又は特定役員引継要件
事業規模要件とは、被合併法人等の被合併事業とそれに関連する合併法人等の合併事業のそれぞれの売上金額、それぞれの従業者の数、被合併法人等と合併法人等のそれぞれの資本金の額、もしくはこれに準ずるものの規模の割合が概ね5倍を超えないことを求める要件です。
さらに、特定役員引継要件とは、合併前の被合併法人の特定役員のいずれかと合併法人の特定役員のいずれかとが、合併後に合併法人の特定役員になることが見込まれていることを求める要件です。
(6)株式継続保有要件
被合併法人の発行済株式総数の50%超を支配する株主が、その交付を受けた合併法人株式の全部を継続して保有することが見込まれいていることを求める要件です。
繰越欠損金の引継制限・使用制限・特定資産譲渡等損失の損金不算入
上記では、税制適格要件を満たすことにより、繰越欠損金が引継げるケースについて説明してまいりました。
しかし、注意しなければならないのは支配関係が生じてから5年以内の場合に以下の制限があるということです。
・被合併法人からの繰越欠損金の引継制限
これは多額の繰越欠損金がある法人を買収し、その後適格合併を行うことにより、被合併法人の繰越欠損金を不当に利用しようとするような租税回避行為を防ぐための規定です。
・合併法人の繰越欠損金の使用制限
逆さ合併等による租税回避行為を防止するための規定です。
・特定資産譲渡等損失の損金不算入
特定引継資産(被合併法人等が支配関係発生日前から有していた資産)及び特定保有資産(合併法人等が支配関係発生日前から有していた資産)の譲渡等から生ずる純損失額について損金算入制限を課する規定です。
※ 以下の資産は除きます。
・土地(土地の上に存する権利を含む)以外の棚卸資産
・売買目的有価証券
・組織再編の日における帳簿価額が1,000万円未満の資産
・支配関係発生日において含み益を有する資産(申告書への明細添付が要件)
・完全支配関係内の非適格合併で引き継いだ譲渡損益調整資産以外の資産
※ みなし共同事業要件を満たしている場合、上記の制限等は適用されません。

